皮革の歴史や、原皮と衣料革・レザーウェアとデザインなど、
レザーウェアの基礎知識について解説しています。
レザーウェアの製造にあたっては、当然その素材となるべき革の性状を 、知ることが必要とされる。いかに鞣しや染色が服飾用皮革として完全な素材であったとしても、希望する幅や長さを自由に織り上げることができる繊維製品と異なり、動物本来の自然の形態を変えることは不可能である。衣服のデザインによって、選んだ素材の面積より大きい型紙を入れる場合や、革の部分的性状の違い、型紙の使用部分とのにらみ合わせなどで、そのデザインのどこかに切り替えをつけたり、変更したりしなくてはならないことがあるが、これらを無視することによって想像もつかぬほどの不経済なロスを生んだり、始末に負えぬ結果を招くことが応々にして起ることを念頭におくべきである。
勿論、数多い作品のデザインには、革を意識せず自由な型紙を用いてつくる作品を、展示会や雑誌で見ることもあるがこれは数少ない特殊な素材を用いたり、また一般素材の中から特に大判のものや優れたものだけを選んで使ったりした特殊な例であり、これらは量産も出来ず、素材の選別も難しいので一般的には革を意識したパターンに基づくのが無難である。その意味でレザーウェアのデザイン、型紙、型入れ、素材の選別などの間には切っても切れない密接な関係がある。次にそのポイントを記すと、
●革の物理的な性状を知ること。
●革の種類によって大きさの制約がそれぞれにあること。
●革の衣料は「切り替え」をどこで使うか、どう生かすかがコツで、美しさと合理性が溶け合ってこそ完全な作品といえる。この点を注意して市場に出ている高級レザーウェアと、実用的レザーウェアを比較してみるとうなずける点が各部分に見られるはず。
●制約された面積に、どのようにして型が入れられ、そのために合理的な切り替えがどのようにしてあるか。
以上のような点をチェックして行くと、このレザーウェアはなぜ高価なのか、あるいはなぜ安価なのかが自然と判明してくるだろう。そして、さらに安価に仕上げるための経済的な切り替えと、革の良い部分だけを用いるための良心的な切り替えとの区別が、製品を見ただけではっきりとしているに違いない。
■次のページ
・良いレザーウェアの見分け方とファッション